ブランク


被災地支援報告 ボランティアエピソード

松本美代子

 ふれあい教室が流されて、10月に拠点ができるまでは、陸前高田市の児童デーサービスのスタッフと子育て支援スタッフは合同で活動しました。小学校内の学童クラブ、川の駅(地産品売り場)の集会所、保育園、計4箇所を巡回するキャラバン活動です。午前中の活動が終わると、スタッフ達は一度仮設の役所に帰り、午後から竹駒小学校の特別支援教室に集まってミーティングを行います。H23年度、竹駒小学校の支援教室は対象児童がいないので空き教室になっていたので、拠点が出来るまでの仮措置として借用したのだそうです。福祉と教育の壁をとっぱらって福祉部長さんと教育部長さんの話し合いによって、この活動が実現したとのことです。
 私(松本)は、午前中の活動が終わってから、竹駒小学校への移動も初回はレンタカーのカーナビに助けられましたが、2回目からは慣れたもの。玄関付近や廊下で出会う教職員や児童とも気軽に挨拶しながら教室に行きます。そして、皆さんとのミーティング。まるでスタッフの一員のように受け入れていただきました。
 学校にまつわるエピソードをいくつか思いつくままに書いてみます。

1)  竹駒小学校の子ども達:私が仮設のトイレを探していたら、側を通りがかった男の子が、場所、水の流し方、手を洗う場所などを教えてくれました。敬語の使い方、お辞儀の仕方などが自然に身についている様子が心に残りました。その男の子だけ特別かな・・・などと思っていたら、出会う子ども達がみんなそうなのです。都内の学校ではあまり出会わなくなった清々しさ。しかも、あの被災の後です。学校を後にした車の中で子ども達のやさしさを思い出し、涙がじわーんと出てくる私でした。

2)  米崎小学校の子ども達:りんご学童に訪れるときはいつも授業中。ですから、校内での児童との出会いはとても少なかったのです。でも自動車移動が多いボランティア活動中、朝昼夕方と一日に何度も学校の前を通ります。特に夕方の下校時に学校付近で子ども達に出会います。横断歩道で車を止めると、かならず子ども達はお辞儀をしてから横断歩道を渡ります。そのお辞儀も身に着いた自然なものでした。一日のボランティア活動が終了する頃の夕方、この風景に出会うと、もうたまりません。目の前の景色が涙ににじんでしまうのです。今思い出しても胸が熱くなります。

3)  子ども達の笑顔:避難所で暮らしている高齢者の方とのお話で、子ども達の笑顔や声に励まされるとのことを聞きました。被災直後はもちろんそんなことは考えられなかったけれど、少しずつみんなが動き始めた頃のこと。元気の元を、中学生や高校生のお兄さんお姉さんが作ってくれたそうです。このティーンエイジのお兄さんお姉さんが、率先して支援物資をみんなに配ったり、「沢から水がでるよ」とおじいさん達から聞くと、リヤカーで日になんども水を運んでくれたりしたそうです。やがて、小学生の子ども達がお兄さんお姉さんをしたって一緒に活動するようになり、あの「子ども達の声」が避難所に戻ってきたそうです。このお話をしてくださったのは、福祉課で保育園やふれあい教室の事業に関わっている方です。ご自分も被災に合い、我が子(男児)の心のケアについて心配していらっしゃいます。「一応学校に行っているんだけど、なかなか言葉にしないから、どうなっているのかなぁと思います」と。
 10月に再度お会いしたときにエピソードを話してくださいました。夏に支援団体がバスをチャーターして遠足に連れて行ってくれたのだそうです。自分から「行って見ようかな」と言ってくれたので参加申し込みをしました。帰ってから「楽しかったね。また行きたいね」と言ってくれたそうで、その言葉に母としてほっと安心したそうです。我が子が少しずつ少しずつ乗り越えている様子がこの出来事、言葉で感じられたそうです。日ごろ、ボランティア活動がどれだけ役に立っているかについてボランティア同士と話し合うことがあります。でも、このエピソードで、私も、何かの役に立っているんだろうなと感じられました。

4)  S保育園(7月)−神奈川県警の警察官のおじさんたちが遊びにきた−
 毎日暑い中交通整理をやってくれている警察官に子ども達が絵のプレゼントをしました。
 お返しに、警察官のおじさんがおやつにアイスのプレゼントをしてくれました。そして、おやつが終わったら園庭で遊んでくれました。10数名の制服警察官が子ども達と追いかけっこ、戦いごっこ、肩車あそび・・・・。子ども達もおじさんもとてもうれしそう。おじさん達は被災地で毎日大変な日々を過ごす中で子ども達の笑顔に出会えてとてもうれしそうでした。そして、この子達の親御さんと保育士さん達に「この子達を育ててくれてありがとう!」と感謝。

5)  Y保育園 −秋田からボランティアの団体からの「ババヘラアイス」のプレゼント−
 全園児が集まってみている前で、ボランティアが次々にウェーハースの上にのっかったピンクと黄色のアイスを配ってくれました。誰か一人が「いつものアイスより100バイおいしい!」と言うと、このフレーズが次から次へと他の子ども達に伝染していきました。なんて素敵な光景。この場にいられて良かったなぁ・・・。子ども達っていいなぁ。

6)  ボランティアへの恐怖??:保育園巡回でのこと。構音不明瞭なお子さんの相談でAちゃんの観察を依頼されました。まずは、忍者(?)のように遠くから教室内の保育やおやつの様子を観察。どうも発達の問題ではなさそうです。おやつはおせんべい。噛む力も問題なさそう。でも・・・なんだか飲み込みにとっても苦労している様子。これは、Aちゃんと仲良くなって奥地の中を見る必要があります。そこで、少しずつ、少しずつ子ども達との距離を縮めてまずは周囲の社交的な子ども達と仲良くなりました。
 特に慎重になった理由は、保育士の方から、「実はAちゃんはゲスト恐怖(着ぐるみ恐怖?)があるんです。」と聞いたからです。被災以降、様々な支援団体が子ども達を励ますために保育園に訪問して楽しい活動を提供してくれました。特に多いのが「着ぐるみ」。そして、たいていは、保育士さんが司会になって、「さぁキャラクターの○○ちゃんの登場です!さぁどうぞ!」とドラマチックに着ぐるみを紹介します。ほとんどの子ども達はその司会の言葉に大興奮。でもAちゃんは着ぐるみが苦手。被災前はせいぜい年に1-2回のイベントが、まぁ来る日も来る日も着ぐるみがやってきます。とうとう、着ぐるみを着ていないお客さんまで苦手になってしまったとのこと。そういえば、保育園に訪問するたびに、私を含めてゲストの多いこと多いこと。お陰で(?)、子ども達はとても社交的になっていました。でも、その反面、Aちゃんみたいに苦労している子ども達もいることも自然なこと。Aちゃんに共感しながらも、なんとかAちゃんのお口の中をのぞいてみないと「シゴト」にならないし・・・と悩みながら、一策を講じた次第。まずは、周囲の子ども達と怪獣の話しで盛り上がりました。そして、「ガオー」「ガオー」と怪獣ごっこ。みんな大笑いするなかで、Aちゃんは警戒を少しずつ解いてくれました。そして、とうとうAちゃんも「ガオー!ガオー!」それも思いっきりのけぞってくれたのでお口の中を全部見せてくれました。ということで、Aちゃんの構音の原因がわかり大いに助かった次第です。でも、もしかして、周りの子ども達のノリノリ状態は、これまでの着ぐるみゲスト達のお陰かも。ということは、Aちゃんも着ぐるみの恩恵に間接的にはあずかっていたのかもしれませんね。

7) ふれあい教室のエピソード
 「子どもSTの会の寄付で、教室のドア(パーテション)が出来ました」1月28日の研修会でスライド写真を見て思い出したお子さんがいました。走り盛りの3歳のA君。活動中につまんないなぁ、にがてだなぁと思ったら、シーツで仕切られたドアをどんどんすり抜けていきます。その都度、お母さんや職員と追いかけっこ。
 ドアが出来た後はどうなっただろう? クリスマス会の集合写真にとってもいい顔をしておさまっているA君を見て、ふれあい教室のみなさんとお母さんに見守られながら成長していることを感じました。






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