今月のコラム


 むかしむかし、あるところに、背の高い幼稚園児がいました。幼稚園に行くのが大好きで、運動会をとても楽しみにしていました。運動会には、お母さんが見に来てくれます。
 運動会の日になりました。張り切って徒競走に出ました!頑張りましたが、結果はビリでした。残念だったなと、思いました。
 その日の夜、お母さんから「身体が大きくて背が高いのに、身体を持て余してへんな格好で、ゆっくり走るんだもの」と大笑いされました。
 自分ではへんな格好とは思っていなかったので、とてもびっくりしました。そして、お母さんに笑われた事が、とても悲しかったのでした。
 それからかなりの年月が経ち、幼稚園児は大人になりましたが、このことは、悲しい思い出として、時々思い出したそうです。
 幼稚園の時には分からなかったけれど、大人になって思い返すと、運動会が終わってからお母さんに「よく走ったね」と、走りきったことを認めて貰えなかったことが悲しかったのだと思ったそうです。
 お母さんには言って貰えなかったそうですが、大人になってから思い出した時に「よく走ったね、幼稚園の自分」と、自分で自分に話しかけて過ごしていたら、この事をあまり思い出さなくなったそうです。
 めでたし、めでたし。
 どんとはれ※

 これは、私の小さいころの出来ごとです。半世紀前のことになってしまいましたが、鮮明に覚えていて、小さかった私にかなりの衝撃を与えた母のことばと反応でした。
 運動音痴への気づきは、この時が始まりでした。運動の苦手意識(発達性協調運動障害と他にも特性色々!!と自己診断!)は学校に上がってから、更に強まり、運動会の前には、寝る前に「学校が火事になって(雨だと延期になるので)、運動会がなくなりますように」と、神様に必死に真剣にお祈りしていましたが、願いが聞かれる事は有りませんでした(笑)。中高での球技大会は、拷問でした(苦笑)。今となっては、笑い話ですが。
 あのとき、母に「走ったね」と一言、言って欲しかったなあと思います。幼稚園児の時は、ただ母に言われた事が、悲しくて辛かっただけでしたが、大人になるにつれて思い返すと、下手でも認めて欲しかったのだと今更ながら思います。
 運動が苦手な事は今も変わりはないのですが、現在は、運動会や徒競争も無く、他の方に迷惑が掛からず、かつ、自分が身体を動かすと気持ちが良いと思える程度の運動(ストレッチや万年初心者の太極拳等)を楽しめるようになり、やっと、運動が楽しいと感じられるようになりました。下手でも楽しめる運動に、大人になって出会えたことがとても嬉しいと思いつつも、金曜夜はビールを飲みたいのをちょっと堪えて、いそいそと太極拳に通っています。 おしまい

 ※どんとはれ・・・「めでたしめでたし」 岩手の方言で物語の最後に締めくくる言葉

2019年8月 子どもSTの会 副代表・総務





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