10月のコラム


「ST+保育者、“甘え”を考える」

 私はSTとして重症心身障害児施設や療育施設で7年間突っ走ってきました。
現在は、幼稚園の保育者として、毎日子どもたちと生活を共にしています。
 私が勤務する幼稚園の保育は、「子ども一人一人を大切に、ありのままの姿を受け入れ、育んでいく」ことを中心においています。中川信子先生の著作『発達障害とことばの相談』(小学館)の中に、『ひとりずつを大切にする、それがスペシャルな教育』というお話があります。「本来、教育においてはひとりずつの興味、ひとりずつの能力に合わせた教育をするもの」と三木安正先生のお考えが書かれています。深い共感を覚えました。STも保育も目指すところは子どもの健やかな育ちです。それぞれ登山道は違うけれど、同じ頂上に向かっているのだから、私でも何かやれるかもしれないと、背中を押されたのでした。そういうわけで、私は経験年数たった半年の「見た目はベテラン、中身は新人」の保育者です。このフレッシュな時期に文章を残したいと思います。

 1学期の間、よく泣くある子どもに対して、少し厳しくしていました。こだわりからくる涙であると評価していたからです。ここで子どもの意に沿えば、次の要求が手に負えなくなるかもしれないと感じたのです。ある日、泣き止まない子どもを見かねた主任に「私に免じて甘えさせてあげてね」と言われました。このとき、「甘え」について考える機会が与えられました。それからずっと、心に小さな灯火がゆらゆらしています。
 日常を振り返ると、幼稚園の子どもたちはとても甘えます。「抱っこして」「ご飯食べさせて」「一緒に遊んで」「膝に座らせて」(自然と私の膝に座ります)、挙げればキリがないほどです。しかし、今思えば療育に来ていた子どもたちは甘える姿をあまり見せませんでした。共に過ごす時間が短いことやこちらの問題もあるでしょうが、人間関係をつくることが苦手ということも関係あるのかと感じました。コミュニケーションをしている相手の気持ちを理解しにくいお子さんがいますから、相手の好意をあてにすることも難しいのではないでしょうか。
 子どもが甘えてきたら、存分に甘えさせたほうが良いという話はよく聞きます。しかし、子どもたちの「甘え」に対する大人の対応によって、自立にも危うい育ちにも繋がります。大人自身のために「甘やかす」のではなく、子どもから出てくる自然な「甘え」が必要です。自然な「甘え」を引き出せるように、私の武器である2つの視点を駆使します。漠然としていますが、次のように言えると思います。

 STが先行すれば、子どもたちの「未来」を予測して「今」を過ごし、保育者が先行すれば、子どもたちの「過去」をつくるために「今」を過ごします。
 2つの視点があることで、彼らがより良く「自分」を生きていくサポートができればと思います。まだまだ失敗ばかりですが、同じ失敗は繰り返さないように、そして2つの視点を行き来しながら、子どもたちと過ごす日々を楽しみたいです。

2022年10月 子どもの発達支援を考えるSTの会 運営委員 





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