本書は「発達障害のある子と家族が幸せを実感しながら生きてほしい。それを応援する。」という臨床家としての私の志を形にしたものです。
幸せとは何か?本書の解説をお願いした慶応義塾大学大学院・前野隆司教授は、巻末の解説で、幸せな人とは「多様な仲間とともに、自分らしく、前向きに、ワクワクしながらやりたいことにチャレンジしている(人)」と定義し、そして「すべての個性は尊重され、尊敬されるべきである。・・・差は垂直的な優劣ではなく、水平的な個性の差なのです。差異は尊重し、尊重されるものとして記述されるはずです」と述べられています。(前野教授は日本の「幸福学」の第一人者であり、巻末解説だけでも読む価値ありです)。
では、子どもやその家族が、尊重され、そして、幸せな人として暮らすための「鍵」となるものは何でしょうか?それはコミュニケーションです。
本書では、私の言語聴覚士としての経験と知見に基づいて、子どもと家族が幸せになるためのコミュニケーションのコツを(1)尊重されたい。(2)安心したい。(3)信頼できる人に出会いたい。(4) 「できることがある」と感じたい。(5)楽しみたい。(6)ひとと繋がりたい。という6つに分けてお伝えしています。
私たち言語聴覚士は、コミュニケーションを専門としているわけですが、私たちの責務は子どもを「評価」し、「訓練」することではありません。子どもと家族が幸せに生きるために、言語聴覚士の専門性を駆使して、全力で「応援」することです。本書は、保護者に読んでいただくために、基本的なことを、できるだけわかり易く書いています。その根底にある私の志を感じてくださり、共感してくださる方がおられたら、それは、まさに「幸せ」です。
2024年6月 子どもの発達支援を考えるSTの会 運営委員 原 哲也
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